シネマレビュー その41 『BFG:ビッグ・フレンドリー・ジャイアント』
スティーブン・スピルバーグ監督が描くファンタジーアドベンチャー。
ロンドンの児童養護施設で暮らすソフィー(ルビー・バーンヒル)はある夜、街を巨人(マーク・ライランス)が闊歩している姿を目撃してしまう。それに気づいた巨人はソフィーを巨人の国へと連れていってしまうが・・・
応援したい!のだけれど・・・
残念ながらアメリカ本国で興行的に厳しい結果となってしまった本作。
日本でも公開二週目の時点で早くもランキング圏外となってしまいました。
スピルバーグと聞くだけで胸がときめく自分としては何とも寂しい現実ではあるのですが、しかし・・・
今回は、ちょっとだけ仕方ないかな、とも思ったりして(^^;
決して嫌いな作品ではないんですよ。
まるで一冊の絵本を読んでいるかのような幻想的な雰囲気や、不気味に見えて実はお茶目で可愛い巨人と、とっても賢いソフィーの交流。
『E.T.』や『未知との遭遇』といった初期スピルバーグ作品に感じられた溢れんばかりの“夢”がたくさん詰まっている本作。嫌いになるわけがない!
ただ、ハイレベルなファンタジー映画が量産される昨今の現状を鑑みると、本作の細部の甘さ、詰めの弱さは無視できないとも思うんですね。
まず誰もがツッコむところだと思いますが、巨人のおじさん。
真夜中とはいえあんなに堂々とロンドンの街中をズカズカ歩いてたら、そりゃあ見つかって当然ですよ(笑)
(というか、よく今までバレずにいられましたね・・・)
しかも、姿を見られたと知るや否や強引にソフィーを“誘拐”してしまう巨人。「いつになったら帰れるの?」
「帰ることは出来ん。ずっとここにいるんだ」
って、アンタは鬼か!
しかも巨人の住処の周りには、もっと恐ろしい人喰い巨人がいるという始末。
どこが“フレンドリー”な巨人ですか!(笑)
(いや、確かに実際は、とってもいい人なんですけど・・・)
と、出だしからクエスチョンマークの連続となってしまうものですから、その後にほんわかあったかな物語を描かれても中々入っていきづらいんですよね。
本作は児童文学の名匠・ロアルド・ダール氏の原作を忠実になぞっているそうです。無理なつじつま合わせをせずに原作の世界をそのまま再現したという意味では十分に成功したといえる作品なのでしょうが、それだけに目新しさに乏しく、物語のディティールにも甘さが目立つという欠点も浮き彫りとなってしまったようです。
ただ、観終わったあとで確かに感じられる優しさと温かさは、本作が紛れもないスピルバーグ作品であることの何よりの証明だったと思います。
更に本作はあの『E.T.』も手掛けた脚本家、メリッサ・マシスン氏の遺作でもあります。そう思うと、もっと多くの人たちに、とくに子どもたちに観てほしいという思いは募るばかり。
物語とは別の部分で切なさが去来してしまう、そんな作品でした。
札幌市内で『BFG:ビッグ・フレンドリー・ジャイアント』を上映している映画館は「ユナイテッドシネマ札幌(サッポロファクトリー内)」と「札幌シネマフロンティア(ステラプレイス内)」です。
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