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シネマレビュー その31 『サウスポー』

category :  2016.6.9 

southpaw ボクシングの世界ライトヘビー級チャンピオンのビリー・ホープ(ジェイク・ギレンホール)は些細な揉め事によって妻を死な せてしまったことをきっかけに全てを失ってしまう。老トレーナーのティック(フォレスト・ウィテカ―)と共に再起を賭け、再びリングへ上がる決意をするビリーだったが・・・

 

もっと強いパンチが欲しかった!

 

突然ですが、最も映画向きのスポーツは?と聞かれると何と答えるでしょう。

 

人それぞれ意見はあるでしょうが、「ボクシング」と答える方は非常に多いのではないかと思います。実際、名作と称される作品は『ロッキー』『チャンプ』『レイジング・ブル』など挙げればキリがないほどで、その数の多さは明らかに他スポーツより飛びぬけたものがあるんですよね。

 

理由は様々でしょうが、“打たれても立ち上がる”という不屈の精神性や、渾身の一撃を叩き込む瞬間のカタルシスなど、ドラマパートとの結び付きとエンターテイメント性の両立をさせやすいことが大きな理由ではないかと思います。

 

乱暴な言い方をすれば、一定の力量を持ったスタッフ・キャストが揃えば、一定の水準をもった作品が生まれやすい題材なんだと思うんですよね。

 

本作もその例に漏れず、見事な肉体を作り上げてきたJ・ギレンホールの迫真の演技や、アントワン・フークア監督の手堅い演出によって充分に楽しめる一作となっていることは疑う余地もありません。

 

ただ・・・これまで量産されてきた数々のボクシング映画の中で一線を画した輝きを放つには、些かパンチ力が不足していたと言わざるを得ないデキだったのも事実だと思います。

 

前半は良かったと思います。

 

栄光をつかみ幸福な人生を送っていたビリーが、妻の死をきっかけに奈落の底へと転落し、娘とも引き離されてしまうまでの一連の描写はJ・ギレンホールの狂気の滲む演技も相まって、後半のカタルシスを期待させるに十分な完成度だったと思いました。

 

ところが、そこから一気にトーンダウンしてしまうんです、この映画。

全てが予想の範囲内で、既視感が拭えないんですよね。

 

老トレーナー・ティックの過去や、ビリーを慕う少年との交流など、描き込めば幾らでも深みが出そうな要素が全て急ぎ足で処理されてしまっており、終盤の展開と有機的に結びついていないんです。

 

とくにライバルの描写不足は致命的で、妻の死との関連が有耶無耶なままであるばかりか、これといった台詞すらも与えられないまま試合を迎えるため、“越えるべき壁”としての機能は果たせずじまい。

 

タイトルでもある“サウスポー”の真の意味など、ドラマ的にも感動できる部分は多かったにもかかわらず、あと一歩熱狂出来るものがなかったのが非常に惜しい!

 

小細工なしのストレートパンチ、悪くはないと思うのですが、観る者がうち震えるような興奮を呼び起こすにはパワー不足でした。映画向きの題材といえど、やはりなかなか難しいものがあるのだな・・・と感じさせられる一作だったと思います。

 

札幌市内で『サウスポー』を上映している映画館は「ディノスシネマズ札幌劇場(ディノス札幌中央ビル7・8階)」です。

 

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