☆シネマレビュー その3 『黄金のアデーレ 名画の帰還』
グスタフ・クリムトが描いた肖像画「黄金のアデーレ」。
第二次大戦中、ナチス・ドイツに強奪され、オーストリアへ運ばれたこの肖像画のモデルとなった人物の姪であるマリア・アルトマン(ヘレン・ミレン)は、新米弁護士のランディ(ライアン・レイノルズ)の助けを借り、オーストリア政府に絵画の返還を求めた訴訟を起こすが・・・
単なる法廷モノ・・・じゃなかった!
第二次大戦にてナチスが引き起こしたユダヤ人の大量虐殺。
『シンドラーのリスト』(1993)、『戦場のピアニスト』(2002)など、映画作品としてもこれまで数多く描かれてきました。
しかし、蛮行はそれだけではなかったんですね。
当時、ナチスは侵攻した欧州各国の芸術作品を強奪。それらの品々は日夜連合国の爆撃による破壊の危機に瀕していたといいます。
その数、実に500万点。
その中の一つが、本作で描かれる「黄金のアデーレ」だったというわけです。
法廷ものとしても見ごたえある本作ですが、それ以上に印象に残るのが回想として描かれるマリアの過去。
幸せだった少女時代、華やかな結婚式。そんなマリアを常に見守ってきたのが、愛すべき家族と「黄金のアデーレ」だったというわけです。マリアにとってこの絵画は単なる美術品などではなく、幸せの象徴でした。
ナチスの横暴により黄金のアデーレは無残にも奪われてしまい、ついには両親とも離れ離れになってしまいます。
全てを奪い取ったかに思えたナチスですが、唯一、彼女から人間としての尊厳だけは奪えませんでした。だからこそ、彼女は無謀とも思える戦いに挑むことができたのです。
そんな凛とした強さを内に秘めた女性をヘレン・ミレンが好演。
そして、新米弁護士を演じたライアン・レイノルズの熱演も光りました。金目当てで引き受けた仕事のはずが、次第に弁護士としての使命に目覚めていく様を見事に演じ切っています。
気難し屋のおばあさんと少々頼りない新米弁護士、この凸凹コンビぶりが観ていて本当に微笑ましい!彼らの長きに渡る戦いが報われるか否か、それは是非とも劇場で。
過去は過去、という言葉もありますが、刻まれた記憶は決して消すことはできません。過去と向き合い、未来を変えていく。その気持ちこそが今を生きるために必要なのでしょう。
とても上質な映画、おすすめです!
札幌市で『黄金のアデーレ 名画の帰還』映画を上映している映画館は「ユナイテッド・シネマ札幌(サッポロファクトリー内)」と「札幌シネマフロンティア(ステラプレイス内)」です。(2015年12月5日時点)
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