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シネマレビュー その23 『ズートピア』

category :  2016.5.7 

高度な文明を築いたあらゆる動物達が共に暮らす大都会・ズートピア。23

ウサギとして初の警察官に任命されたジュディは肉食動物が突如として凶暴化するという事件を担当することになる。キツネの詐欺師・ニックと共に事件の解決に乗り出すジュディだが、そこにはズートピアを揺るがす大きな陰謀が隠されていた。

 

ともに生きてゆく

 

近年のディズニー・アニメの完成度には目を見張るものがあります。

 

それがジョン・ラセター氏がピクサーから招聘されて以降であるのは誰の目にも明らかなのですが、真の意味で素晴らしいのは自身の伝統に対し真っ向から挑戦し、ともすれば破壊することも厭わないというディズニーの極めてクリエイティブな姿勢に他なりません。

 

本作は、そんなディズニーの挑戦がまたしても炸裂した傑作でした。

 

本作の肝は、“肉食動物と草食動物が共生する世界”という舞台設定にあります。

 

その部分だけ抜き出せば正しく種族の壁を越えた理想郷と言えますが、その実態は決して明るいものではなく、力の強い肉食動物が非力な草食動物を抑圧しているという醜い現実がありました。

 

これが人種、民族、性別の違いなどからくる差別問題のメタファーであるのを見抜くのは然程難しくないのですが、驚かされたのはそういった問題に対する非常に真摯な向き合い方です。

 

生れ育った環境、過去の記憶、経験、外部から流れて来る情報・・・

あらゆるものがその人の観念に影響を与え、形を成しています。

 

非力なウサギが警察官を目指す。

周囲からバカにされ続けながらも、ジュディは夢をかなえます。

 

大切なのは、何に生まれたかではない。どのようにして生きていくかである。

これだけでも十分に素晴らしいメッセージですよね。

 

しかしそんな彼女でさえ、気付かないうちに肉食動物は本来凶暴であるというレッテルを貼ってしまっていました。

 

自分では意識をしていなくても、誰かを傷つけてしまうことがある。

一見優等生で、間違いを犯しそうにないジュディに敢えてこのような偏見の目を持たせることで、本作は観客である我々の中にもあるであろう、潜在的な差別意識に容赦なく問題を突きつけるわけです。

 

そして、そんなジュディや、やはり過去に経験した差別によって道を踏み外した詐欺師のニックが真の自分を受け入れ、乗り越えていく姿を見せることで、本作は単なる子供向けの絵空事に留まらない、極めて現実的で明快な解決策までも提示してみせるのです。

 

過ちは、誰もが犯すもの。

しかし、一人ひとりが自分を知り、変えていく勇気を持てば、きっと本当の理想郷が待っている―

 

非常に可愛い見た目とは裏腹に、とてつもなく重いテーマを背負った作品でした。そして、そんな作品だからこそ、多くの子どもたちにこそ本作を観賞して欲しいと心から思います。

 

その他、バディムービーとしても、ミステリー映画としても、コメディ映画としても極めて高い完成度を誇る本作。本年度最高クラスの傑作として、自信を持ってオススメしたいと思います!

 

札幌市内で『ズートピア』を上映している映画館は「ユナイテッド・シネマ札幌(サッポロファクトリー内)」、「札幌シネマフロンティア(ステラプレイス内)」です。

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