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シネマレビュー その21 『スポットライト 世紀のスクープ』

category :  2016.4.21 

第88回アカデミー賞にて作品賞を受賞した実録ドラマ。spotlight

アメリカ・ボストンで最大の発行部数を誇るボストン・グローブ紙。同紙で調査報道を手掛ける“スポットライト”担当班はカトリック教会の神父による児童への性的虐待事件について追跡取材を開始する。全米でもカトリック教徒の多いボストンにおいて調査は難航するが、次第に想像を絶する真相が明らかになってゆき・・・

 

どれだけの衝撃をもって受け止められるか

 

本作を観るうえで予め知っておくべきなのは、本作が完全に“調査する側”の視点のみで描かれているという事です。

 

観客はスポットライト担当班が取材し、調査していく様をひたすら台詞によって追っていくという姿勢を取らざるを得ません。だから、事件について予備知識がない方は集中力を切らせると途端に物語から置いてきぼりを喰らう恐れがあります(笑)

 

はっきり言って、非常に地味な作品なんです。

 

これ、題材が題材なので不適切な表現かもしれませんが、もっとエンタメ路線に振ることだって出来たはずなんですよね。

子どもたちが実際に虐待を受ける場面を描けば、神父や教会に対する嫌悪感は大きく増し、勧善懲悪の理解しやすい構図となっていたはずです。

 

しかし、本作は敢えてそれをしなかった。

 

必要以上に観る者の感情を煽るのではなく、あくまで冷静に、この全米を揺るがせた一大スキャンダルが“どのようにして暴かれたか”を見せてゆく。その切れ味鋭い描写こそが、本作最大の見どころと言ってよいでしょう。

 

ただ問題なのは、本作における「カトリック教会」という巨大権力が、我々日本人にとってそこまで心に根差したものではないという点なんですよね。

 

つまり基本的には宗教と距離を置いた生活を送る我々日本人と、アメリカの人々との間では、最初から前提となる事実に対しての捉え方に大きな開きがあると思うんです。

 

“カトリック教会の神父が児童に対し性的虐待を行っていた”という事実に対し、どれ程の衝撃を感じ得るか。その度合いの違いによって本作への印象は大きく異なると思います。

 

そして恐らく多くの日本人は、現地アメリカの人々ほどの衝撃と恐れを抱くことは出来ない。

 

その一点において、どうしても本作の魅力はスポイルされてしまうと言わざるを得ません。

 

かくいう自分も、ムダのない脚本と俳優陣の熱演も相まって見応え充分の作品ではありましたが、果たしてこれが年間通じて最高の作品か、映画的に何か目新しいものがあったかと問われると素直には頷けないというのが正直なところです。

 

個人的に、本作は作品そのものの完成度よりも、こうした事実を社会的に認知させたという功績こそ評価されるべきと感じました。

 

札幌市内で『スポットライト 世紀のスクープ』を上映している映画館は「ユナイテッド・シネマ札幌(サッポロファクトリー内)」と「シアターキノ(狸小路6丁目南3条グランドビル2F)」です。

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