シネマレビュー その16 『アーロと少年』
ディズニー/ピクサーの最新CGアニメーション。
舞台は巨大隕石の衝突が回避され、絶滅を免れた恐竜たちが文明を築いた世界。
アパトサウルスのアーロはある日川の急流に飲み込まれ、生まれ育った土地から遠く離されてしまう。目が覚めた彼が出会ったのは、人間の子供・スポットだった。二人は反発しあいながらも帰るべき場所へ戻りはじめるが・・・
“ピクサー”であることの意味
宣伝の段階で違和感はあったんですよね。
イマイチ惹かれるものがない『アーロと少年』というタイトルに(原題は『THE GOOD DINOSAUR』)、見ていてムズ痒さを覚える感動押しの予告編、さらにはどういうわけか今更「ちゅらさん」な日本版主題歌(^^;
それでもやっぱり期待値を上げて観にいったのは、ほかでもなく本作が“ピクサー印”だったからなわけで(^^)
『トイ・ストーリー』でバズが空を飛んだ瞬間に、『カーズ』でマックイーンがレースを放棄した瞬間に、『ウォーリー』でロボットが手を繋ぎ合った瞬間に、どうしてあんなに涙が溢れるのか。
それは、大人の心にこそ突き刺さる現実的な目線と毒っ気、そして厳しい現実を受け入れたうえでもなお、挑戦し変化してゆくことの大切さを純粋に心に訴えかける素晴らしいストーリー展開があったからだと思うんですね。
本作にそれが無いというわけではないんです。
ただ、その描き方がピクサーにしてはあまりにも平坦で新鮮味に乏しいんですよ。もっと言うとどっかで観たことある話にしか見えないんですよね(^^;
王道のストーリー展開が悪いわけではないんですが、それでも観ている側をあっと驚かせる何かがあったのがピクサー映画だったと思うんです。
異なる種族同士の交流を描いた作品としてはほかに『モンスターズ・インク』がありますが、こちらが圧倒的なアイディアとビジュアルセンスで誰もがワクワクする大傑作に仕上がっていたのと比較すると、本作には明らかに物足りなさが残る。
思うにそれは、“恐竜と人間とが共存する世界”という素晴らしい舞台が設置してあるのに全くそれを活かせていないからだと思うんですね。
要は、別に恐竜と人間じゃなくても成り立つんですよ、このお話。
そして、このお話だったら “ピクサーが製作する意味” がなかったんじゃないかと思わずにはいられません。
“ピクサーとはかくあるべき”なんて押しつけがましいことを言うつもりは毛頭ありませんが、それでも長年培ってきたピクサーならではの“色”みたいなものは大事にしてほしかったな、とは思いました。
とはいえ映像の素晴らしさはもはや実写と遜色ないレベルですし、こども向け映画として一定水準を十分に越えた作品だとは思います。
“ピクサー映画”ということにこだわりがなければ、オススメです。
札幌市内で『アーロと少年』を上映している映画館は「ユナイテッド・シネマ札幌(サッポロファクトリー内)」と「札幌シネマフロンティア(ステラプレイス内)」です。
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