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シネマレビュー その10 『白鯨との闘い』

category :  2016.1.18 

hakugeiハーマン・メルヴィル作「白鯨」の基となったとされる捕鯨船の航海を描いたサバイバルドラマ。1819年、鯨油を入手するため一等航海士のチェイス(クリス・ヘムズワース)らを乗せて出航した捕鯨船エセックス号。ところが船は巨大なマッコウクジラと遭遇し大破してしまい・・・

 

壮大な大海原、矮小な人間ドラマ

 

本作の監督であるロン・ハワードといえば、一昨年の『ラッシュ プライドと友情』が個人的にその年のベスト級に好きな映画でありまして(^^)

そのため自然と期待値も上がっていたんですが・・・

正直、今一歩だったかなぁという印象でした。

 

果てしなくつづく大海原、“怪物”と称される巨大なマッコウクジラ。

19世紀の捕鯨の実態や、海上での生死をかけたサバイバル描写。

 

重みをもったパーツがこれだけ揃っているにもかかわらず、全体的にみると何とも喰い足りない感覚を覚えるのは、ひとえに“人物描写が淡泊”ということに尽きるかと思われます。

 

前出した『ラッシュ』を例に挙げるならば、主要登場人物である二人のF1レーサーそれぞれに、一言では形容しがたい魅力がありました。それにより単なるカーレース映画の域を越え、普遍的な人生哲学まで昇華できる深みが生まれていたと思うんですよね。

 

翻って本作はどうでしょう?

 

まずは主人公である一等航海士のチェイス。

家族を愛し、仕事に誇りを持つ彼は好人物ではありますが、悪く言えばいかにも観客が好みそうな

“ありがち”な主人公で、今一つ面白みに欠ける。

 

彼と対立する船長のポラードは実力もないのに名家の生まれであることを鼻にかけて威張り散らす、

これまた“いかにも”なお坊ちゃん

 

もちろん、名匠ハワード監督が手掛ける本作。終盤になるとそれなりに観応えあるドラマを展開してはくれますが、やはり予想を上回るような驚きや感動があったとは言いがたい。

 

いくら19世紀の名著を下敷きにしているとはいえ、2016年の今に届ける物語としては、些か凡庸すぎると言わざるを得ないんですね。

 

そして、そんな人物描写の淡泊さはそのまま作品全体の印象にも波及しているように思われます。

 

“鯨を獲りに行ったら返り討ちにあって船が沈没した”という

事実以上の何か・・・たとえば『ラッシュ』や、海洋サバイバル映画の傑作『ライフ・オブ・パイ』のような普遍性や象徴性といったものを、本作からは感じることが出来なかったんです。

 

それが、本作の喰い足らなさを生んだ一番の要因ではないかと思いました。    

 

個人的には、監督の次回作に期待したいところです。

 

札幌市内で『白鯨との闘い』を上映している映画館は「ユナイテッドシネマ札幌(サッポロファクトリー内)」、「札幌シネマフロンティア(ステラプレイス内)」、「ディノスシネマズ札幌劇場(ディノス札幌中央ビル7・8階)」です。

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