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シネマレビュー その40 『ハドソン川の奇跡』

category :  2016.9.28 

クリント・イーストウッド監督が描く人間ドラマ。add

2009年1月15日。ベテラン操縦士のサレンバーガー機長(トム・ハンクス)が操縦する旅客機は鳥との衝突でエンジンを停止してしまう。ハドソン川への着水を成功させ、乗客乗員、更にはニューヨーク市民の命を見事に救ったサレンバーガー機長だったが、そんな彼の決断に事故調査委員会は疑念の目を向け・・・

 

ザ・職人映画。

 

本作の原題は『SULLY』。これは機長のサレンバーガー氏の愛称です。

 

このタイトルが示す通り、本作は航空事故ではなく、チェズレイ・サレンバーガーという人間に対してスポットを当てた作品となっています。

 

まず見事なのはその構成でした。

 

本作は事故当日から事故調査委員会での問答など頻繁に時間軸が入れ替わる複雑な流れとなっています。しかし、それらは飽くまで物語上の必要性があった時にのみ行われているため、観ていてまったく混乱することがないんですね。それどころか、このような巧みな構成が物語への興味をより持続させ、ドラマ性を一層深める効果を発揮しているのです。

 

そうして描き出されるのは、サレンバーガー機長の“職人”としての生き様でした。

 

サレンバーガー機長、通称サリー。パイロット一筋40年、愚直に積み重ねてきたそのキャリアこそが彼の誇りであり、人生そのものであったわけです。

 

そして本作の監督、クリント・イーストウッド。彼もまた、俳優、監督として永きにわたるキャリアを築き上げてきた超一流の職人でした。そんなイーストウッド監督だからこそ、サリー機長には多くのシンパシーを抱いていたであろうことは想像に難くありません。

 

科学が発達した現代、数字やデータに囚われるあまり、かえって物事の本質を見失っていると思うような出来事が多々起こっています。

 

ハドソン川への着水は、本当に正しい選択だったのか?

本当に、エンジンは停止していたのか?

 

無機質なデータを並べて追及する委員会に対し、あくまで己の感覚と経験を信じ続けるサリー機長。しかし本作が見事なのは、ここで“頭でっかちな組織vs昔気質の職人”という安易な構図に走らなかったことにもあると思いました。

 

ラストに待っているのは、誰もが100%、納得がいくであろう結論です。

 

それは決して感情に走らず、あくまで冷静に、論理的に考えることを貫き通したサリー機長だからこそ導くことのできた結論でした。そして、本作の爽快感溢れるラストもまた、そんなサリー機長に共鳴したイーストウッド監督だからこそ描けた結末だったのだろうと思います。

 

航空界と映画界、二人の職人が手掛けた究極のザ・職人映画!

 

全編IMAXカメラで撮影された美麗な映像もまた大きな見どころの一つです。

是非、できる限り大きなスクリーンでご覧ください!

 

札幌市内で『ハドソン川の奇跡』を上映している映画館は「ユナイテッドシネマ札幌(サッポロファクトリー内)」と『札幌シネマフロンティア(ステラプレイス内)」です。

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